~円満離婚とは?とにかく早く離婚することが円満離婚ではない~

○はじめに

円満離婚とは、離婚条件について、お互いに冷静に、法律上最低限のラインを踏まえつつ、譲れるところ、譲れないところを確認しながら協議し、その結果、お互いに納得のいく条件での離婚を成立させることができた場合をいいます。

 

求めるべきものを求めず(話し合うこと(対立してしまう可能性)を避け)、離婚だけを成立させた場合、揉めることはなかったかもしれませんが、それでは真の円満離婚とはいえません。

夫婦が条件面で折り合いをつけ、お互いに納得できるラインを確保しながら、円満に離婚するためにはどのようにしたらいいのでしょうか。

 

○円満離婚するために

 円満離婚を目指す方は、「平和に問題を解決したい」「相手ともめたくない」「相手の言い分も理解したい」など、 相手や周囲の人のことを配慮した思慮深い行動をすることができる常識的な方が多いと思います。そのような方は、争いを避けるために配偶者の意思を尊重したり、条件面でも妥協をしてしまいそうになるかもしれません。

 

しかし、目指すところは「離婚をすること」ではなく、「離婚後、少しでも不安のない納得感のある生活をする」ことなのです。

離婚という人生の大きな分岐点のなかで、相手と多少なりとも折衝しながら折り合いをつけて解決していくわけですので、全くの無傷で終結する事はほぼ不可能なのです。そのことを理解し、どうしても妥協できないポイントがある場合は、相手とぶつかることも覚悟の上で、最善を目指した方がいいといえます。

 

上記のことを心に停めたうえで、「お互い納得できる条件で穏便に離婚すること」を真の円満離婚の定義とし、円満離婚を成功させるポイントを解説していきます。

 

〇円満離婚を成功させるための13のポイント

❶とことん話しあう

会話をほとんどしないまま、円満離婚は目指せません。夫婦で納得し離婚するには、離婚理由からお金のことまでとことん話しお互いに理解し納得する必要があります。

一方が離婚に納得できない場合は、時間をかけて説明し納得してもらこうことが重要です。

 

❷切り出すタイミングをしっかり押さえる

離婚は、思った以上に周りの環境や、精神面に大きな変動が訪れます。前もって心の準備を十分にしておきましょう。

円満離婚を目指すなら、離婚を切り出すタイミングは「お互いの気持ちが落ち着いているとき」がベストです。具体的には、「~離婚の切り出し方~ ②どのような順序で話したらいいのか分からない方へ」で解説していますが、いずれにしても切り出してから即離婚とは考えず、離婚しようと思った理由を説明して、なるべく考える時間を与えることが重要です。

 

❸ 離婚までの期間は半年から1年以上は考えておく

離婚したあとは自分の生活や、子供がいる場合は子供の環境を整えてあげる必要もあります。急に離婚をすると路頭に迷うケースも考えられます。

「実家に帰る」という選択肢も視野にいれて、生活の基盤をどのように整えるかを念頭におき動きましょう。

 

❹子供の親権はどちらが持つか決めておく

ひとくちに親権と言っても、親権には「身上監護権」と「財産管理権」という二つの権利があり、一般的に子供と一緒に住む権利は「身上監護権」の方です。もっとも、親権を身上監護権と財産管理権に分離することは通常はありません。親権とは、身上監護権と財産管理権の両方を併せ持つ権利であり義務であると理解しておきましょう。

 

離婚届には親権者を書く必須の欄があり、これを記入できないと離婚は出来ませんので、お互いがよく話し合って、どちらが子供と住んだ方がより幸せにできるのかを判断していく必要があります。

なお、「子供の幸せ」を尊重することと、「子供の意思」に委ねることは全く別です。まだ未成年の子に「お前が決めろ」などという残酷な決断を押し付けないように注意してあげてください。

 

❺離婚後の養育費の支払いについて話し合う

子供がまだ未成年の場合は、どちらが養育費を払うのかは大きな問題です。夫婦が離婚し他人となった場合でも、子供を育てる義務が消えたわけではありません。これは親権者に関係なく父と母が分担すべき費用であり、収入が多い親から少ない親へ、子どもと離れて暮らす親から養育している親へ資力に応じて支払うのが一般的です。

養育費の支払い方法や支払い期限としては、話し合いで自由に決める事ができ、期限は「子どもが社会人となって自立するまで」が目安とされています。

 

❻親権者は非親権者と子どもとの面会交流を認めてあげる

子供にとって親の離婚事情は全く関係ありません。親権者となった方は、離婚後も相手に月1回程度は子供に会わせてあげることを考えてみてください。頻度や回数、メールなどのやり取りはOKなのかどうかも細かく決めておく事でいらぬ心配は減っていくでしょう。

 

❼財産分与について決めておく

財産分与とは、夫婦の共有財産を分ける事で、基本的に夫婦には平等の権利があり、1/2ずつの財産分与になります。

スポーツ選手など、個人の特別な才覚によって、多額の資産を形成している場合には、分与割合が1/2ではないケースも裁判例には存在します。しかし、経営者や開業医として平均世帯よりも多額の資産形成をしていたとしても、1/2の割合での財産分与となります。

財産分与の割合は、1/2ずつであると理解しておきましょう。

 

財産の中に、家、車、配偶者の事業のための借入について連帯保証をしている負債がある場合や配偶者が経営する会社の(非公開)株などがある場合には、後々トラブルになるケースがあるので必ず決めておきましょう。

例えば、マンションなどを購入していた場合、共有名義の場合、住宅ローンを組むときに夫婦の収入を合算するので、より多くのお金を借りられると言ったメリットがありますが、「一緒に返済していこう」と約束していた夫婦でも、離婚した際に共有名義であることがさまざまな問題を引き起こします。

 

❽住宅ローンに対する対応を決めておく

もし、離婚成立後に住宅ローンが残っている家にどちらかが住むことになった場合、住宅は財産分与としても重要な位置づけがされているため、夫婦間で納得のいく処理をしなければなりません。

 

❾慰謝料に関する取り決め

浮気など慰謝料が発生しうる問題があっても、すでに解決している、無理のない範囲で慰謝料の取り決めができるであれば円満離婚を目指せます。

 

➓離婚に関する決め事は公正証書にしておく

これまで夫婦間で話してきた内容は、必ず離婚協議書にまとめ、公正証書にしてもらう事をおすすめします。公正証書とは、公正役場の公証人が法律に則って作成する公文書のことで、話し合った内容の高い証明力と、養育費などの金銭的支払いが滞るような場合に、裁判を行う事なく強制的に相手の財産を差し押さえることができます。

 

若干の費用と手間がかかりますが、後々お互い嫌な思いをしなくないのであれば、公正証書を作成すると良いでしょう。

 

⓫離婚後の生活をどのようにするのか決めておく

離婚後の生活や当面の費用を考えておくことも必要です。特に女性にとって、離婚後の生活が上手くいくかどうかの分かれ目は、経済的な自立ができるかどうかが大きな分かれ道といっても良いでしょう。

 

円満離婚を目指す場合では配偶者からの援助がもらえて、さらに公的機関からの支援も期待できますが、それだけで生活がしていけるほど十分な額が集まることは稀だと思った方が良いでしょう。

まずは仕事を見つけることから始めてみるのが良いのではないでしょうか。

 

⓬離婚後に幸せになれるかどうか考える

離婚して幸せになれるかどうか、これは人それそれぞれで幸せの感じ方が違うため一概には言えませんが、下記の項目に当てはまる方は概ね幸せと言って良いのではないでしょうか。

 

・経済面

生活費がまかなえる収入を得られる仕事がある

預金や不動産収入がある

離婚後の慰謝料・財産分与・分割年金などが期待できる

精神面

ひとりでも辛くない

周りの人に離婚について中傷されても傷つかない

離婚を少しも後悔しない

・環境面

親身になって相談できる友人が身近にいる

頼りになる離婚経験者がいる

両親が離婚に理解がある

 

離婚後に幸せな生活を送るには、自分にとって納得感の高い生活とはどんなものなのかを考え、その準備をする必要があります。離婚に後悔のないように、配偶者と入念な話し合いをおすすめします。

 

⓭離婚届を出す際は証人を見つけておく

離婚届には証人2名の署名捺印が必要です。証人には20歳以上であれば誰でもなれますので、夫婦の親・兄弟姉妹や友人などで、証人になってくれる人を見つけておきましょう。ちなみに、全然知らない他人でも問題ありません。

  • 調停離婚や裁判離婚では証人は必要ありません。

 

○最後に

円満離婚が実現できればお金と時間をかけず元配偶者とのトラブルも最小限に抑えられます。しかし、円満離婚を成功させるためには、冷静な話し合い、公平な条件設定、子供の気持ちの尊重など、様々な配慮が必要です。

 

離婚は法的な問題も多く含むため、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は離婚協議を円滑に進めるためのアドバイスを提供してくれます。

実際に依頼するかどうかは別として、泥沼化する前に相談できる弁護士を見つけておくことは離婚を切り出す際の安心につながります。

 

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この記事の執筆者

弁護士山口恭平

あい法律事務所

弁護士

山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)

取扱分野

家事案件(離婚・男女問題、相続)

経歴

法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。