熟年離婚と慰謝料
長年連れ添った夫婦でも、様々な問題から離婚を考えることもあるでしょう。
また、離婚後の生活や婚姻期間中の出来事により「慰謝料」を請求したいと考えることもあるかもしれません。
では、離婚の慰謝料とはいったい何でしょうか。
離婚の慰謝料とは、離婚によって被る精神的苦痛を補償するものです。
慰謝料は相手方に婚姻関係を破綻させた法律上の責任がある場合に認められます。
○「性格の不一致」「信仰・宗教の違い」「夫(妻)の両親の介護をしたくない」「自由な時間が欲しい」など、相手方に非があるとはいえない場合
これらが理由で夫婦関係が冷え切ってしまったとしても、相手方に法律上の責任がある、とは言えませんので、慰謝料請求はできません。
○「不倫」「暴力」「暴言」「生活費を渡さない」「ギャンブルにお金をつぎ込み家計に影響が出ている」など相手方に非があるといえる場合
これらが原因で夫婦関係が破綻したといえる場合には、夫婦関係を破綻させた責任を相手方に追及することができますので、慰謝料の支払いを求めることができます。
○慰謝料額
婚姻期間が長いことは慰謝料増額の理由となります。
何十年間も大事にしてきた夫婦の平穏を壊した責任は、多くの取り返しのつかない事態を引き起こしますので、新婚の場合と比べて重いといえます。
一方で、婚姻期間が長いと、その間にいろいろな事がありますので、相手方に一方的に非があるといえるのか、もともと夫婦関係は壊れかけていたのではないか、という問題も発生しやすいといえます。
この場合、円満な夫婦関係が壊してしまった場合の方が責任が重く、壊れかけの夫婦関係を壊した場合の責任の方が軽い、ということになります。
あとは、「不倫」や「暴力」の内容がどの程度の違法性を有しているかが重要な要素となります。
1回の浮気よりも、10年以上続く浮気の方が違法性が高いので、取るべき責任も大きくなります。
慰謝料額は、50万円から500万円を超えるようなケースまで個別の事情によって多岐に渡ります。
具体的な事情を弁護士に相談した上で、慰謝料額の見込みを確認した方がよいといえます。
○10年も前に発覚した不倫を理由に離婚請求することはできるのか?
・時効の壁
慰謝料には「時効」があります。
不倫の慰謝料は「不法行為にもとづく損害賠償請求権」の1種ですが、この権利の時効は「損害及び加害者を知ってから3年間」です。
この3年間は、「離婚時」からカウントが開始します。
つまり、夫(妻)に離婚慰謝料を請求する場合、10年前の不倫でも、時効にはかからない、ということです。
・夫婦関係破綻との因果関係の壁
10年前ということは、10年間は夫婦関係を継続ているということになります。
離婚慰謝料請求は、夫婦関係破綻の責任が相手方にあるから請求できるものです。
つまり、10年前の不倫の発覚が、現在の夫婦関係破綻の(法律上の)原因になっている必要があります。
この10年間、表面的には平穏な夫婦関係を維持している場合、それが我慢の上に成り立っていたとしても、今回の夫婦関係破綻の原因として10年前の不倫を主張することは難しいといえます。
逆に、不倫の発覚後、別居が続いているような場合には、10年前の不倫の影響が10年間続いていたということになるので、10年前の不倫を理由に離婚慰謝料を請求できる可能性が高いといえます。
この記事の執筆者
あい法律事務所
弁護士
山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)
取扱分野
家事案件(離婚・男女問題、相続)
経歴
法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。