熟年離婚と持ち家(自宅)

 

熟年離婚を考えている方、熟年離婚を切り出されてしまった方、いずれの方にとっても自宅に関する悩みは大きなウェイトを占めるものといえるのではないでしょうか?

 

○住む場所としての自宅は夫婦の財産でもある

「自宅に住み続けていては、相手方のことを思い出してしまうので、さっさと自宅から出て行きたい。」というお気持ちの方もいます。

一方で、「住み慣れた住環境から離れたくない。」という気持ちをお持ちの方もいらっしゃいます。

 

相手方が自ら出て行ってくれれば(自宅はいらないと言ってくれれば)いいのですが、相手方も「自宅に住み続けたい。」と主張する場合、どちらが住み続けるのか、という対立が発生します。

どちらが住み続けるのか、という問題は、離婚後どちらが自宅を取得するのか、という財産分与の問題、と言い換えることができます。

ケースごとに考えてみましょう。

 

①結婚後、自宅(土地建物)を購入し、夫または妻の収入でコツコツと住宅ローンの返済を続け完済している場合

 

夫婦間の財産分与を考えるにあたっては、登記上の所有者が夫側であるか、妻側であるかは関係ありません。

今でもたまに、夫側から「名義が俺の名義になっているから自宅は俺のものだ。」という主張を聞くことがありますが、夫婦間の財産分与を考えるにあたっては、誤った主張である、ということになります。

※こういうことを言い出す人と話し合いで解決することは難しいので、早めに弁護士に相談して離婚調停等の手続きを始めましょう。

 

説明を続けます。①のケースの場合、自宅の価値は、100%夫婦の財産ということになります。

自宅の価値が1000万円の場合、自宅を取得する側が、取得しない側に対して、500万円を支払わなければならない、ということになります。

※もちろん、財産分与は、自宅だけを精算するわけではありませんので、その他の預貯金等の財産を合計した上で、2分の1ずつの財産を取得することになります。

 

出来ることなら自宅に住み続けたい、とお考えの方も、いったん立ち止まって、このような代償を支払ってまで、自宅を手に入れるべきなのか、再考する必要があります。

 

②土地は、妻側の父から妻が譲り受けたものである。その土地の上に、夫名義で建物を建築し、建物建築費用を住宅ローンで調達し、夫婦の収入から完済した。

 

この場合、土地は、妻の特有財産ということになります。

特有財産とは、夫婦の財産にはならない財産です。

したがって、夫婦の財産として財産分与を検討しなければならないのは、建物だけということになります。

つまり、建物の価値分だけを精算すればよいということです。

妻側が建物を取得する場合、建物の価値が200万円であれば、100万円を夫側に支払えばよい、ということになります。

 

他方で、夫側が建物を取得することを考える場合、当然、土地も取得しなければいけません。

土地は、妻の特有財産ですから、土地の価値が800万円であれば、妻に合計900万円(800万円+100万円)を支払わなければなりません。

 

③結婚後、土地建物を4000万円で購入したが、夫側の父から1000万円の援助があり、残りを住宅ローンで調達し、夫婦の収入から完済した場合

 

土地建物の価値の4分の1は、夫側の特有財産ということになります。

土地建物の現在の価値が1000万円の場合、250万円分は夫側の特有財産であり、750万円が夫婦の財産ということになります。

夫側が、自宅を取得する場合、妻側に対して、375万円を支払えばよいということになります。

他方で、妻側が自宅を取得する場合、625万円(250万円+375万円)を支払わなければならない、ということになります。

 

まとめ

このように、自宅をどのように取得したのかによって、財産分与の内容が変わってきます。

また、③のケースの場合、1000万円の援助があったこと、自宅の購入費が4000万円だったことを立証しなければならない可能性もあります。

さらに、今回は自宅の価値を決め打ちで説明しましたが、不動産の価値には幅があり、自宅の価値に争いが生じる可能性もあります。

損をしないよう、弁護士に相談することをおすすめいたします。

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この記事の執筆者

弁護士山口恭平

あい法律事務所

弁護士

山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)

取扱分野

家事案件(離婚・男女問題、相続)

経歴

法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。