養育費が払われていない!給料差押さえの手続き
養育費について、離婚をする際、公正証書や調停調書の作成をし、夫婦で取り決めを行ったにも関わらず、
支払いが滞ったり、相手と連絡が取れなくなるなど、問題を抱えている方は珍くありません。
そのようなとき、元配偶者の給料を差し押さえ、強制執行をすることもひとつの方法です。
給与差押えの手続きの流れについてご紹介いたします。
1.給料差し押さえとは
給料の差し押さえとは、相手が有する勤務先の会社等に対する給与債権(給料を支払ってもらうことのできる権利)を差し押さえるものです。
2.相手の給料を差し押さえるための条件
相手の給料を差し押さえるためには、以下の条件が必要です。
①債務名義を有していること
債務名義とは、相手に請求できる権利の内容を記載した公的書面のことをいいます。
(調停調書、審判書、確定判決、強制執行認諾文言付公正証書等)
②相手の勤務先を把握していること
給与差押えを行うためには、差押え対象を特定する必要があります。
よって、相手の勤務先の会社名、住所の把握が必要となります。
③相手の現住所を把握していること
債務名義に記載された相手の住所と、相手の現在の住所が異なる場合、差し押さえの申立ての前に、相手の現住所を調査する必要があります。
3.具体的な差押え手続きの流れ ~高松地方裁判所で申立てをする場合~
上記の条件が整えば、債務者(相手方)の住所を管轄する裁判所へ申立書を提出し、給与差し押さえを実行することが出来ます。具体的には以下のような流れとなります。
❶裁判所への申立て
<提出書類>
□ 申立書(表紙・当事者目録・請求債権目録・差押債権目録)
□ 執行力のある債務名義(判決、和解調書、公正証書等)の正本と送達証明書(※)
★債務名義が家事審判の場合は、確定証明書(※)も必要
※予め、債務名義を取得した裁判所等で準備してください。
□ 収入印紙4,000円(債権者1名、債務者1名、債務名義1通の場合)
□ 郵便切手必要額
□ その他の添付書類(発行後3か月以内のもの)
(例)
・当事者が法人の場合は、登記事項証明書(法務局で取得)
・当事者の住所や氏名が債務名義の記載と現在で異なる場合は、変更前・変更後の繋がりが分かる公文書
(住民票、戸籍の附票、登記事項証明書等)
※第三債務者に対する陳述催告(差押債権内容について「陳述書」を提出するよう催告する手続)の申立てを行う場合は債権差押命令申立てと同時に申し立てをします。
※養育費の場合、原則として給料の手取り(税金や社会保険料等を差し引いた額)の2分の1まで差し押さえることができます。
❷債権差押命令
審査が通れば、裁判所は債権差押命令を発令します。
❸第三債務者に送達
第三債務者に「差押命令正本」を送達します。
★第三債務者に「差押命令正本」が送達されると差押えの効力が生じます。
❹債務者(相手方)に送達
第三債務者が差押命令正本を受け取ったことを確認できたのち、債務者に「差押命令正本」を送達します。
❺債権者(あなた)に送達通知
債務者に「差押命令正本」が送達されると、債権者に「送達通知書」と「差押命令正本」を送付します。
★陳述催告の申立てをしている場合は陳述書も併せて送付します。
❻取立て
債務者に「差押命令正本」が送達されて1週間(ただし、給与等の差押えで、請求債権に扶養義務等に係る金銭債権が含まれない場合には4週間)が経過すると、債権者は、第三債務者から差押えにかかる債権を取り立てることができます。
❼取立届
第三債務者から取立てをした場合は、定期的に「取立届」を裁判所に提出します。
➐-1 取立完了届
差押債権の全額を取り立てたときは、「取立完了届」を裁判所に提出します。
➐-2 取下書
①債務者から弁済を受けたとき
②差押債権が存在しなかったとき
③取立ての見込みがないとき等の場合で差押えを維持する必要がなくなったとき
上記の場合は、「取下書」を提出します。
❽債務名義還付申請
取下げ等により事件が終結した場合、「還付申請書」を提出して債務名義と送達証明書等の還付を受けることができます。
※詳細は、高松地方裁判所の掲載ページもご参照ください。
https://www.courts.go.jp/takamatsu/vc-files/takamatsu/2022/0930/saikensasiosae.pdf
4.まとめ
以上のように、養育費未払いのため、給与差し押さえをする場合、裁判所へ申立てをし、差押命令が発布された後も、
毎月取立ての度に煩雑な手続きをこなさなければなりません。
養育費の未払いお困りの方は、一度是非弁護士にご相談ください。
一連の手続きをご依頼いただくことにより、手続き上のストレスが軽減されるだけでなく、スムーズに相手方から回収することが可能となります。
また、弁護士が交渉を開始するだけで支払いに応じるケースもあります。
お気軽にご相談頂ければと思います。
この記事の執筆者
あい法律事務所
弁護士
山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)
取扱分野
家事案件(離婚・男女問題、相続)
経歴
法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。