共同親権について

  1. 共同親権の議論が発生した背景事情

・離婚時に子どもの親権をめぐって父母間の紛争が悪化した結果、一方の親の了承を得ずに子どもを自分の管理下に置く子どもの連れ去りが国内外で問題視された

・離婚後親権を失った親が、親権者に阻まれ子どもに会えない状況への改善が非親権者側から求められている期間が長く続いていた。

 

  1. 共同親権は導入されるのか

法制審議会家族法制部会が令和4年11月15日に「中間試案」を取りまとめました。

中間試案では、

(1)「共同親権」を導入する案

(2)共同親権は導入せず、一方が親権を持つ「単独親権」を維持する案

の両方が優劣なく並べられています。

つまり、共同親権が導入されるかどうかは、まだ分かりません。どちらの可能性もあります。

 

  1. 共同親権導入について(私の見解)

現行法下における(監護意欲もあり、その能力に問題もないと思われる)非監護親の「元配偶者に子を連れ去られて会わせてもらえない」「養育費を払うだけで子の行事などの成長を実感できる場にいられない」「子の進路について一緒に考えることもできない」などの切実な想いを数多く聞いてきました。

一方で、親権者側から、婚姻中、非親権者側が「どれだけ子の監護に関わってこなかったか(子育てにおける孤独がどれだけ深かったか、いまさら関わろうとされてもむしろ迷惑であること)」という実際的な不満やDV・モラハラの深刻な被害事例もまた数多く聞いてきました。

 

共同親権導入のメリットもリスクも肌で感じたことがある私としては、共同親権導入に限定的な賛成です。

 

共同親権制度の導入は、社会全体に「子を健全に育てる責任は父母双方が平等に負っている」というメッセージを発することになると思います。

このメッセージによって、社会の意識は、徐々に「母親だから」「父親だから」というステレオタイプな考え方を一層後退させ、父母がともに育児に主体的・積極的に参加する家族の在り方を是とする考え方が推し進められると思います。これは、子の利益になる社会の変化だと思います。日本という国が、このような家族観をもった家庭を目指すのであれば、共同親権の導入はプラスとなります。私は、このような国になって欲しいと思っていますので、共同親権の導入に賛成したいと思います。

 

もっとも、共同親権導入によるリスクについては、十分に配慮する必要がありますので、共同親権とする場合には、裁判所の関与を必須とするような、安全策を用意する必要があると思っています。

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この記事の執筆者

弁護士山口恭平

あい法律事務所

弁護士

山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)

取扱分野

家事案件(離婚・男女問題、相続)

経歴

法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。