熟年離婚と退職金
退職後の生活を支える財産として大きな役割を果たすものとして退職金があります。
熟年離婚の場合、すでに退職金を受け取っていたり、定年まであと数年、という状況にある方がいらっしゃいます。
熟年離婚を考えるにあたって、退職金について考えることは必須といえるでしょう。
○退職金は財産分与の対象になるのか?
なります。
退職金も給与と同様に労働に対する対価としての性質があります。
そうである以上、婚姻期間に相当する割合については、退職金も財産分与の対象となります。
○退職金のすべてが財産分与の対象になるのか?
いいえ。
上記のとおり、婚姻期間に相当する割合に限ります。
勤続期間35年のうち30年が婚姻期間の場合、退職金の30/35(およそ86%)が財産分与の対象ということになります。
○まだもらっていないのに、どのように支払うのか
退職金以外の財産をもって精算することが可能な場合、まだ受給していないとしても、離婚時に精算します。
これが出来ない場合に限って、退職金受給後に精算することとします。
○支給されないかもしれないのに財産分与の対象になってしまうのか
就業規則等に支給の定めがある場合には、支給される蓋然性が高いので財産分与の対象とします。
懲戒解雇によって、退職金の支給がされなかった場合、自ら退職金の受給権を放棄したものとして、懲戒解雇になる可能性を考慮することはしません。
○退職金が支給される前と後、離婚するならどちらが有利か
妻側の場合、金額のことを考えれば、退職金支給後の方が有利です。
ただし、使われてしまう前に清算する必要があります。
夫側の場合、退職金支給前の方が有利です。
別居ないしは離婚時に退職した場合の退職金の金額を退職金の金額として扱います。
通常は、定年退職と途中退職の場合では、定年退職の方が、退職金は大きくなります。
退職金は、妻側、夫側、双方にとって大切な老後の生活資金です。
分からないことがあれば、専門の弁護士に相談に行くことをおすすめいたします。
この記事の執筆者
あい法律事務所
弁護士
山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)
取扱分野
家事案件(離婚・男女問題、相続)
経歴
法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。