増える熟年離婚。過去最多割合
現在、同居期間が20年以上ある熟年夫婦の離婚割合が増加しています。
厚生労働省の「令和4年度 離婚に関する統計 (2022年) 」の概況によりますと、2020年の離婚件数のうち、同居期間が「20年以上」だった夫婦は21.5%を占めており、これは、1950年以降で最も高い数値となっています。
一般的に熟年離婚とは「夫婦の年齢にかかわらず、結婚してから20年以上経った後に離婚すること」を意味する言葉とされています。
では、なぜ熟年離婚が増えているのでしょうか。
1. 女性の社会進出
女性の社会進出により、40代以降も収入基盤のある方が増え、離婚後、経済的に困窮することが少なくなってきました。
社会構造の変化により女性の自立化が進み、夫に頼ることなく生活するという選択肢が増えたことも一因でしょう。
2.平均寿命が伸びた
医学医術の進歩や衣食住にわたる生活改善の影響で平均寿命が伸びた昨今、熟年夫婦の母数が増えたことも要因と考えられます。
以前は離婚を考える前にどちらかが亡くなるということも多く、熟年夫婦の数は相対的に少なかったはずです。
寿命が延びたことで、高齢になってからも夫婦健在のケースが増え、結果的に熟年離婚も増えたと思われます。
また、仕事や子育てが終わり、自分のためのセカンドライフを目前にしたとき、長期的に健康で過ごせる展望が持てるため、“悔いのない人生”を送るために離婚と言う選択肢を採る方が増えたとも言えるでしょう。
3.相手が自宅にいることがストレス
近年、この理由での熟年離婚が圧倒的に増えています。
今まで相手に不満がありながらも、日中仕事で不在だったことで、すれ違いを利用してなんとか婚姻生活を続けていた場合であっても、相手が定年や引退によって自宅にいる時間が増えてくることによって、癒しの場であった自宅が一気にストレス空間へと変わるのです。
今まで相手との関係から目をそむけてきた場合は、長時間同じ空間にいることにより「もう無理!」と音を上げるケースが多いのです。
4.相手の介護や義理の両親の介護をしたくない
平均寿命が伸びたことにより、親族間・夫婦間で介護が必要なケースが増えたことも、熟年離婚が増えた要因のひとつになっています。
現在では介護保険制度が充実しており、夫婦で介護を行わなくても、国や市区町村が生活をサポートしてくれます。
とくに、育児や家事などの家庭環境を守るために自分を犠牲にしてきた女性にとっては、やっと育児がひと段落ついたところで、今後の人生は自分のために使いたいというのが、離婚の大きなモチベーションになっていると考えられます。
5.夫の年金をもらうことで経済的に自立できるようになった
平成19年から年金分割制度が始まり、離婚後に夫の年金を一部分割してもらうことができるようになったため、老後の資金を確保しやすくなりました。
年金分割制度が整ったことで、離婚後の経済面で心配することが減ったことが、離婚増加の要因の一つであると言えるでしょう。
6. 離婚に対するイメージの変化
ひと昔前には、離婚に対して暗いイメージを持つことが多く、世間体などを気にして離婚を思いとどまる人が多かったですが、現代では離婚は珍しいことではなくなりました。
むしろ、離婚することにより、前向きな気持ちになれたり、新しい世界が広がるなど、プラスの面もあることも事実です。
また、メディア等の影響もあり、離婚に対するイメージは以前より大きく変わりました。そのイメージの変化が、離婚に対するハードルを下げたことも熟年離婚増加の一因と考えられます。
熟年離婚をお考えの方へ
夫婦が生涯仲良く添い遂げることが理想なのですが、どうしても離婚したいと考えた場合、相手方に離婚を切り出す前に、離婚後の生活を十分想定しておくことが何より大切です。
特に、熟年離婚は、慎重に考え、進めていかなければ後悔することにもなりかねません。
また、離婚することによって子どもの生活にも影響が出てくるでしょう。離婚後の暮らしや周囲に対する影響を十分に考えて後悔のない選択をするべきでしょう。
また、熟年離婚は夫婦の老後の生活設計の大きな変動をもたらすものであり、財産分与の対象となる財産が高額かつ複雑になりがちであることから、夫婦間での合意に至りにくい傾向にあります。
熟年離婚をお考えでしたら、なるべくお早めに弁護士に相談のうえ、必要な準備を進めていくことが解決への近道です。
この記事の執筆者
あい法律事務所
弁護士
山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)
取扱分野
家事案件(離婚・男女問題、相続)
経歴
法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。