調停委員はどんな人?
○ 調停では、相手方本人や裁判官ではなく、調停委員(2名、男性と女性1名ずつ)と話しをします。
調停委員2名+裁判官1名(または調停官)で「調停委員会」を構成します。
裁判官は、基本的に、調停が成立・不成立になるときや、裁判官の意見が必要なとき等にのみ同席し、毎回の調停に現れるわけではありません。したがって、離婚調停では、ほとんどが調停委員を相手に話すことになるのです。
○ 年齢
調停委員の年齢の条件は、原則として40歳以上70歳未満であることです。
特に50歳代から60歳代が多く、9割程度を占めます。
○ 調停委員になれる人
① 社会生活の上で豊富な知識・経験を有している人
② 民事・家事の紛争の解決に有用な専門的な知識を有している人
③ 弁護士資格を有している
離婚調停で調停委員を務めている方は、主として①及び②の方々です。
地元の名士、学校の先生をしていた方、司法書士・行政書士など様々なバックグラウンドを有している方々が調停委員をしております。
○ 調停委員は離婚の専門家、ではない。
上記のとおり様々なバックグラウンドを持った人が調停委員をしていますが、必ずしも十分な法律知識があるわけではないため、法律の知識がない調停委員の勝手な方針で調停案が提示されてしまう可能性もあります。
裁判官はいつも調停に同席するわけではないため、本来であれば、調停委員は裁判官に適切に相談する必要があります。しかし、調停委員がこれを怠ることもあります。調停委員の言うことが常に正しいとは限らないので、納得できないのであれば、意見する必要もあります。
○ 調停委員を代えて欲しい。
調停委員は、公正中立の立場を貫かなければなりませんが、それを実践できるかどうかは、別問題です。担当になった調停委員とどうしても合わないと感じると、相談に来られる方もいらっしゃいます。
調停委員に不満がある場合、調停委員の交代を求めることは出来るのでしょうか?
結論としては、調停委員の変更は出来ない、ことがほとんどです。
調停委員と当事者が親族関係にあるといった特段の事情(調停委員が一方の味方をする可能性が現実的に存在するような事情)がない限り、当事者の希望で調停委員を変更することは認められていません。
調停の進め方や調停委員からの提案内容に不満があるといった理由では、調停委員の変更は認められません。当事者の意見は対立することが通常であり、調停委員が中立的な調停進行をしていても、一方の当事者からみたら、調停委員が相手方の味方をしていると受け取られてしまうことは珍しくありません。このような場合に、安易に調停委員を変更してしまっては、一向に調停が進まなくなってしまうため、調停委員の変更は認められないのです。
○ 調停委員とは対立せず味方につけることを心がける。
交代を求めることができない以上、最初から、「調停委員を味方につける」ことを心がけて期日に臨むことが大切です。
調停委員も人間ですので、礼儀正しく、丁寧な言葉使いで、感情的にならず、調停委員の話を聞くことが出来る人に好感を抱きます。
まずは、これらの点を抑えることが必要です。
次に、調停委員は、家庭裁判所側の公正中立の立場の人ですので、ある程度、証拠をもって事実の証明をしないと、不倫やDVの事実があったことを前提にはしてくれません。中立な立場である調停委員に納得してもらえるような資料を準備しましょう。
○ さいごに
離婚調停は、弁護士に依頼せずにご自身だけで行うこともできます。ですが、調停委員に対し、一人で対応できるか不安がある場合には、弁護士に相談・依頼するというのも一つの手です。上述したように、調停委員の話を100%信用して進めると不利な離婚条件になってしまうかもしれません。法律的な観点から、どのような主張・立証をすれば良いのか、ご自身の状況に沿った適切なアドバイスを受けることで、離婚調停をご自身に有利に進められる可能性があります。
また、法律の専門家である弁護士にサポートしてもらえれば、一人で対応するよりも、精神的な負担は軽くなることでしょう。
とはいえ、弁護士に相談・依頼するのには費用がかかります。ご事情を鑑みたうえで、「どうしても譲れない離婚条件がある」「DV等が原因で裁判所に赴くこと自体が怖い」「調停委員と話すことに不安がある」このようなお悩みを抱えている方は、弁護士に相談・依頼することを検討してみてはいかがでしょうか。
この記事の執筆者
あい法律事務所
弁護士
山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)
取扱分野
家事案件(離婚・男女問題、相続)
経歴
法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。