夫婦が抱えている借金は離婚したらどちらが返済するのか?
ポイント
1. 離婚するときの夫婦の借金は、名義人以外に返済義務が生じない。
2. 離婚成立後に相手が借金の支払いができなくなった場合の対策として、連帯保証人から外れる手続きが必要。
3. 生活のための借金は負の共有財産。ギャンブルなど個人の趣味嗜好のための借金は、借りた人の負の特有財産。
1. 離婚するときの夫婦の借金は、名義人以外に返済義務が生じない。
借金の返済責任は原則として借金の契約者である名義人に帰属します。
借りた人に返済責任があり、その家族に当然返済する責任があるということにはなりません。
ただし、契約時に、連帯債務者や連帯保証人として借金に関与している場合、返済責任を共有することになる場合があります。
連帯債務者や連帯保証人として借金に署名していた場合は、離婚後も返済責任が残ります。
2. 離婚成立後に相手が借金の支払いができなくなった場合の対策として、連帯保証人から外れる手続きが必要。
借金の連帯保証人として配偶者と一緒に契約した場合、その借金の返済責任を解除しなければ、
離婚後も配偶者がちゃんと返済をしているか、返済していけなくならないか、という不安から解放されません。
そもそも、連帯保証人とは、借金契約において、名義人が返済義務を果たせなかった場合に、金融機関等の債権者に対して、名義人に代って借金を返済する責任を負う人のことを指します。
名義人と連帯保証人は、法的に借金の返済に対して共同して責任を持っています。
しかし、離婚した後に連帯保証人から外れることで、借金に対する責任を解消することができます。
通常、以下の方法で連帯保証人から外れる手続きが行われます:
①金融機関での審査:借金を抱えた名義人に、金融機関に行ってもらい、連帯保証人を外すことが可能かを審査してもらいます。
夫婦双方に収入があることを前提に借りた場合、一方が連帯保証人から外れることに同意してもらえない可能性が高まります。
②借換手続:審査が通った場合、新しい借入についての契約をします。
このときに改めて保証料等の手数料が発生します。この手数料は30万円から100万円程度となることが一般的です。
③不動産の登記変更:旧債務の抵当権抹消、新債務の抵当権設定、連帯保証人だった側に持分があった場合には持分移転登記などの登記手続が必要になります。
司法書士の手数料も合わせて20から40万円程度かかることが一般的です。
3. 生活のための借金は負の共有財産。ギャンブルなど個人の趣味嗜好のための借金は、借りた人の負の特有財産。
離婚をする場合、財産分与で夫婦は財産を2分の1ずつ取得するように精算することになります。
その場合、プラスの財産だけではなく、借金(負の財産)も考慮します。
夫) 預貯金 1000万円
自宅土地建物 1000万円
住宅ローン 1500万円
妻) 預貯金 500万円
の場合、夫の財産はプラス500万円、妻の財産はプラス500万円となります。
この場合、お互いがそれぞれの財産を取得することになり、受渡はなし、ということになります。
※住宅ローンを自宅以外の財産と通算するかについてはケースバイケースです。
上記のケースに加えて、夫がギャンブルのために500万円の借金をしている場合、夫の財産はトータルゼロということになり、妻から夫へ250万円を分与し、250万円ずつ分与するということになりそうです。
しかし、この場合、ギャンブルのための借金500万円は夫婦の負債として計上せず、財産分与においては考慮しません。
財産分与の計算上は、ギャンブルのための借金500万円は考慮せず、夫の財産はプラス500万円、妻の財産はプラス500万円となります。
この場合、お互いがそれぞれの財産を取得することになり、受渡はなし、ということになります。
この記事の執筆者
あい法律事務所
弁護士
山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)
取扱分野
家事案件(離婚・男女問題、相続)
経歴
法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。