住民票いつ移す?
配偶者と子供を連れて別居する場合、離婚前に住民票を移す(世帯分離する)メリットとデメリットを記載していきます。
<メリット>
●郵便物を確実に受領できる
郵便物の一部には転送届を出していても住民票上の住所に転送不要扱いで郵送されるものがあるため、重要な郵便物を確実に受け取るためには、住民票を移す方がいいでしょう。
●児童手当の受給者を変更できる(中学生以下の年齢の子供がいる場合)
児童手当は、基本的には世帯主の口座に給付されます。
住民票を移しておけば、配偶者と別世帯となり、子供を監護している方が児童手当を受給できるようになります。
◆高松市の場合、児童手当受給者変更の審査には下記の書類が必要です。
❶マイナンバー、変更後の口座情報のわかるもの、保険証、本人確認書類 等
❷夫婦関係を証する証明書
・離婚裁判中の場合:離婚調停等の事件係属証明書(裁判所発行)
・離婚協議中の場合:離婚協議中の証明書(弁護士発行)
https://www.city.takamatsu.kagawa.jp/kurashi/kosodate/hitorioya/kosodate/jidoteate.html
●保育料が下がる可能性がある
別居時に世帯分離をしていれば、別居時点でもひとり親世帯とみなして保育料を減額してくれる可能性があります。
◆高松市の場合、保育料減額の審査には下記の書類が必要です。
・離婚裁判中の場合:離婚調停等の事件係属証明書(裁判所発行)
●子どもの別居先への転校がスムーズになる
新しい住所地の公立学校への転校は、原則として、別居先に住民票を移していなければ認められません。
<デメリット>
●国民健康保険料の負担
妻が夫の社会保険の扶養に入っている場合、別居をしても妻は夫の扶養のままになり、夫が保険料を負担することになります。
しかし、夫婦ともに国民健康保険の場合、国民健康保険には扶養という概念がないため、住民票で保険料の負担が変わります。
また、世帯単位で加入することになるため、住民票を移せば世帯が分かれることになり、別居先で新たに国民健康保険へ加入することになり、ご自身で保険料を支払うことになります。
ただし、保険料は世帯の所得によって変わり、所得が低い場合には減免制度を利用できます。保険料の減免制度については以下をご確認ください。
参考:https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.htm
●住民票を移す人が住宅ローンの名義人になっている場合〜契約違反の恐れ
住宅ローンは自分が住むことを条件に金融機関からお金を借りているため、住宅ローンの名義人が家を出て行くことは契約違反になる恐れがあります。
また、住民票を移せば、住宅ローン控除も受けられなくなります。
●住所変更の手続きが煩雑になる
免許証や金融機関などの住所変更をしなくてはなりません。
●配偶者に居場所がばれる(DV、モラハラ等が別居原因の場合)
婚姻中に住民票を移すので、夫婦は同一戸籍に記載されているため、配偶者は戸籍の附票を取得することで転居先を調べることができます。
*場合によっては住民票の閲覧制限を求めることもできます。
まとめ
子どもを連れて離婚前に住民票を移す(世帯分離する)と、転居先の公的サービスなどを利用できたり、子どもがスムーズに転校できたり等、別居先で新たな生活の第一歩を踏み出すこと出来るようになります。
しかし、夫婦が同一世帯であったときの恩恵が受けられなくなる等、デメリットも発生します。
婚姻中に住民票の移す時期については、夫婦の状況に合わせて慎重に判断する必要があるといえます。
この記事の執筆者
あい法律事務所
弁護士
山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)
取扱分野
家事案件(離婚・男女問題、相続)
経歴
法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。