熟年離婚。子どもの氏はどうなる?
熟年離婚。子どもの氏はどうなる?
親が熟年離婚をした場合、子どもの名字(氏)はどうなるのでしょうか。
子どもが成人している場合と未成年の場合に分けて見ていきましょう。
Case1. 子どもが独身で成人している場合
親の離婚前の姓をそのまま名乗る場合
- 何も手続きをしない方法
子どもの年齢に関わらずに、何もしなければ親が離婚した際、離婚前の戸籍から変動がありませんので、子どもの姓は離婚前の姓のままとなります。
- 婚氏続称制度(離婚後も婚姻中と同じ名字を名乗る制度)を利用した親の戸籍に入る方法
親は婚氏続称制度を利用し、離婚後も婚姻中と同じ苗字を名乗る手続きをし、子供はその戸籍の下に入籍します。親の離婚前と同じ名字を名乗ることになりますので、結果的に子の名字の見た目に変化はないのですが、こちらの方法をとる場合でも、居住地の管轄の家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立」が必要となります。
※手続き方法は下記ご参照ください。
- 自分の戸籍を作る方法(分籍)
親の離婚を契機に、戸籍を分籍して自分の戸籍を作る(分籍)という方法もあります。
ただし、分籍は18歳以上の成人でないとできませんのでご注意ください。
また、分籍により名乗ることが可能な名字は、分籍した当時の名字のみとなります。
親が離婚した場合に分籍するメリットは、以下の3点です。
<分籍するメリット>
❶親の離婚や再婚に左右されずに氏を名乗ることができる
❷親が離れて暮らしている場合に本籍地を自分が住んでいる場所に移動することができる
❸分籍することで今後自分の婚姻や離婚・養子縁組など戸籍にまつわる事象を自分の戸籍内だけに留めることができる
親の復籍(旧姓に戻る)に伴い、子も姓を変えるパターン
親の離婚を機に、母(または父)の復籍に伴い、子どもも名字を変更したい場合は、「子の氏の変更許可申立」を家庭裁判所に申立てることで母(または父)の名字を名乗ることは可能です。
子の氏の変更許可申立書が裁判所に受理されて、許可が得られれば役所に入籍届を提出しましょう。入籍届を提出することで親の離婚前の名字から母親もしくは父親の名字に変更することができます。
※「子の氏の変更許可申立書」は15歳以上であれば、自分が申立人になれます。
<各種手続きのご案内>
◆子の氏の変更許可申立てに必要な書類・時間・費用
子の氏の変更許可申立てに必要になる書類・費用は下記の3つです。子の住所地の家庭裁判所へ申立をしましょう。
<必要書類>
- 子の氏の変更許可申立書
- 申立人(子ども)の戸籍謄本
- 親の離婚の記載がある父・母の戸籍謄本
- 収入印紙800円(子ども一人に付き)
- 連絡用の郵便切手(管轄の裁判所にご確認ください)
※子の氏の変更許可申立ては郵送でも受理されます。
※申立から許可の審判が下りますのに、大体1週間程度かかります。(裁判所の案件の込み具合にも左右されます。)
◆子の氏の変更許可が下りた後の手続
裁判所から「子の氏の変更許可書(審判書)の謄本」が届きましたら、管轄の市役所にて入籍の手続きを行いましょう。
<必要書類>
① 入籍届
② 子の氏の変更許可書(審判書)の謄本(裁判所発行)
- お子様の戸籍謄本(本籍地を管轄する役場への提出であれば不要)
- 認印・身分証
入籍届を提出することで親の離婚前の名字から母親もしくは父親の名字に変更することが完了します。
Case2. 子どもが既婚で成人している場合
子どもが既婚で成人している場合は、親が離婚をしたとしても名字にも戸籍にも何ら影響はありません。
名字は結婚した時に定めた名字になっていますし、戸籍も婚姻した相手と独立した戸籍を作っているからです。
Case3. 子どもが未成年者の場合
親が離婚した際に子どもが未成年だった場合も、成人している場合と同様です。
何もしなければ、親権者に関わらず親が離婚するまで使用していた名字のままです。
例えば、親権者が母親で、離婚後母親が旧姓に戻ったとしても子どもの名字は親が離婚前の父親の名字になってしまいます。
母親と子どもの氏を合わせるために、親権者は家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立」を申立てて子どもの氏を親権者の氏に変更することになります。
子どもが15歳未満であれば親権者が法定代理人になり申立てを行うことになります。
※子どもが成人(18歳)した後で、「生まれたときの名字に戻したい」と思ったら、19歳になるまでの1年間で戻すことも可能です。その手続きは、役所に変更届を提出するだけの簡単なものになります。
まとめ
以上のように、親が離婚しても何もしなければあなたの戸籍に変動はありません。
もしも親が離婚し、除籍される方の親の戸籍に入りたいなら、子の氏の変更申立を行い、入りたい方の戸籍に入籍しましょう。
各種手続きが難しいと感じるなら弁護士に相談することお勧めします。ご依頼いただければ、専門的で煩わしい手続きに悩まされることなく、かつ、あなたが将来、結婚等の際に支障の出ないよう、一番いい方法での移動を提案し、手続きをお手伝い致します。
この記事の執筆者
あい法律事務所
弁護士
山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)
取扱分野
家事案件(離婚・男女問題、相続)
経歴
法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。