裁判所が親権を決めるときの評価基準
裁判所が親権者を定めるときの判断基準は、父と母、どちらの監護下で生活させるのがより「子どもの利益・福祉に適うか」です。
裁判所が親権を決めるときの評価基準
裁判所は、その判断をするにあたって次のような原則を維持する傾向があります。
①主たる監護者による監護の継続性維持の原則
②母性優先の原則(とくに乳幼児)
③子の意思の尊重
④兄弟姉妹不分離の原則
⑤面会交流に対する寛容性の原則
そして、裁判所は、上記の原則的な考えを持ちながら以下の要素を考慮します。
A 監護に対する意欲と能力
B 健康状態
C 経済状況
D 居住・教育環境
E 従前の監護状況
F 子どもとの愛着形成具合
G 監護補助者の有無・程度
H 子どもの年齢・性別・兄弟姉妹関係
I 子どもの心身の発育状況
J 子どもの意向
K 子どもの住環境への適応状況
母の下で生活した方が子どもの健全な育成に資するのか、それとも父の下で生活した方が子どもの健全な育成に資するのか、裁判所をもってして、これを正しく判断することは大変難しいことです。子どもがどのような成長を遂げるのかは、裁判時における予測でしかなく、その予測の正確さというのは、心理学や社会学によって今のところ明らかにされている知見に依っています。これらの学問が子どもの心をどれだけ解明できているのかといえば、まだまだ未知の領域がたくさんあります。
分からないからこそ裁判所としては、①主たる監護者による監護の継続性維持の原則を重要視します。今現在、子どもが格別の問題を抱えていなければ、これまでの監護者に監護させておけば、少なくとも現状の成長の健全性は確保されるだろうと考えるからです。わが国では、母が主に子の養育を行っている割合が圧倒的に多く、母親が親権者として適格であるとされることがほとんどです。子どもと過ごす時間が長ければ、子どもとの心理的な絆は深まり、その深い絆を断ち切ることは、子どもに対して深刻な精神的ダメージを与え、健全な育成を阻害する可能性があると考えられるからです。しかし、父側が親権者になるという例外の事例も存在します。
離婚の際に、「親権を争われてしまった。自分も仕事をしていて夫も育児には協力的だった。親権をとられてしまうのではないか。」「これまで自分が主に子どもの養育をしていたのに、相手方に子どもを連れて行かれしまった。このままでは相手方が親権者なってしまうかもしれない。」などの不安を抱えている方、家庭裁判所の実務を熟知したアドバイスとサポートが重要となりますので、弁護士までご相談ください。
この記事の執筆者
あい法律事務所
弁護士
山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)
取扱分野
家事案件(離婚・男女問題、相続)
経歴
法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。