モラハラ 証拠 どのくらい?
なんのために証拠が必要なのか
なにが証拠になるのか、を考える前に、なぜ証拠が必要なのかを知りましょう。
証拠が必要な理由は、
①離婚原因があることを証明するため
②婚姻関係が破綻した責任が相手方にあることを証明するため
この2点です。
①離婚原因があることを立証できれば相手方の意向に関係なく裁判離婚を見据えて離婚を押し進めることができるので、主導権をもって離婚交渉をすることが出来ます。
ですが、離婚するために必ず証拠が必要という訳ではありませんのでご安心下さい。
②婚姻関係が破綻した責任が相手方にあるといえる事実を立証できれば、慰謝料請求をすることが出来ます。
たとえば、日常的に一方的に人格非難(「使えない、頭がおかしい、常識がない」)されている、長時間にわたり説教され謝っても許してもらえないことが頻繁にあるという事実がある場合、この事実は慰謝料請求が認められる可能性のある事実ですので、この事実を立証するための証拠を頑張って集めることには意味があります。
一方で、食の好みや育児の方針が合わずケンカが絶えないという事実は相手方に一方的に責任があるとはいえず、慰謝料請求が認められる事実ではないということになりますので、この事実を立証するための証拠をがんばって集めても意味がないということになります。
証拠が必要な理由をしっかり理解し、意味のある証拠集めをしましょう。
モラハラの証拠
モラハラは証拠が残りにくく立証が難しい事実です。
モラハラは、暴力を振るわれ、怪我をした場合と異なり客観的に認識可能な、いわゆる目に見える傷が残りません。
また、1つ1つの場面を切り取ると、夫婦喧嘩の範疇であったり、夫婦関係を破綻させるほど問題のあるものとは見えなかったりします。相手方の人格非難的な言動が日常的なものであることを立証するためには、いくつもの証拠を積み重ねなければなりません。
そのため、長期的で計画的な証拠収集を求められるケースがほとんどです。
どんな証拠を確保していけばよいのか
①日記
手書きでなくスマホやパソコンに保存したものでも証拠になります。
ただし、以下の点を守ってください。
● モラハラされたら(なるべく)その日のうちに記載すること
● 日時を記載すること
● どんなことを言われ、どんなことをされたのか、どれくらいの時間にわたっていたか、きっかけは何だったのか
、どんな気持ちになったかなど、具体的に記載すること
日記の信用性は上記の点がちゃんと守られているのかにかかっています。
※相手方に見つからないよう注意してください。捨てられたり、データを消されてしまう可能性もありますし、激高し暴力に発展してしまう危険もあります。
②録音・録画
モラハラを受けている現場の様子を、録音・録画したデータも証拠になり得ます。
客観的な証拠になりますので、まさにモラハラの現場を捉えているのであれば非常に価値の高い証拠になります。
録音・録画の数が多いほど、頻繁にモラハラをされていることを証明できるため、1回だけではなく複数集めておくことをお勧めします。
※録音・録画中にバレてしまうことのないよう注意してください。データを消されてしまう可能性もありますし、激高し暴力に発展してしまう危険もあります。
③メール・SNS
モラハラに当たるメッセージをメールやSNS送っている場合、これも証拠となります。相手方の粘着室な気質が見て取れるケースも多く、日記などとの証拠と合わせてモラハラを立証できる可能性が高まります。
LINEの場合、いつのまにかメッセージを消されてしまっていることがあります。そうならないよう、トーク全体をこまめに保存したり、スクリーンショットで保存したりしておきましょう。
④医師の診断書や精神科・心療内科への通院履歴
診断書だけでは、ほとんど証拠としての価値はありません。別居直前に病院に1回行って診断書を書いてもらったというケースもありますが、それだけでは意味がありませんので、病院に行く前に弁護士に相談に行ってどんな証拠が必要かを確認しましょう。
半年、1年という通院履歴があり、配偶者のモラハラに悩まされて通院を続けてきたことが分かるカルテが揃って初めて証拠としての意味があります。
自分自身の健康を守るためにも受診はためらわずに信頼できる病院に行きましょう。
また、必要以上に薬を怖がる必要はないと私は考えていますが、当然、適切な使用というものがありますので、薬との付き合い方については、よく医師と相談して決めて下さい。
⑤警察・公的機関への相談履歴
警察や公的機関(女性センターや精神保健福祉センター等)にモラハラの相談をした事実も、証拠となる場合があります。これらの機関に相談した内容は、相談票といった書面で保管される場合が多いため、それらの写しを取得することで、日記やメモ等に記録したモラハラ行為の日付と照らし合わせて、モラハラの事実を証明するのに役立つこともあります。
証拠を集める上での注意点
まず、証拠集めをしていることが相手方にバレないことが何より重要です。
次に、どの証拠も積み重ねが大事です。モラハラになるか分からなくても、離婚になるかまだ分からなくても、もしもを考える気持ちがあるのであれば、こつこつと証拠を集めましょう。ただ、夫婦を継続する気持ちがあるのであれば、相手方の悪いところ探しの気持ちが勝ってしまわないよう注意しましょう。
最後に、せっかく獲得した証拠が失われないよう、バックアップや隠し場所に注意しましょう。
これらの証拠は、第三者から見てわかりやすいように、時系列順でまとめておきましょう。
なお、証拠を残していることがモラハラをしている配偶者に知られると、データが入っている機器等を捨てられたり、データを消されたりするおそれがあるため、保管場所には注意してください。
モラハラの証拠集めに関するQ&A
Q:モラハラの証拠として無断で録音することは犯罪にならないのでしょうか?
A:家庭での会話をこっそり録音することは犯罪にはなりません。
相手方に勤務する会社に侵入して盗聴器を設置するのは、会社への侵入が建造物侵入にあたり犯罪になります。
録音をするために、違法なこと(どこかに侵入したり、物を壊したり)をしなければ、無断で夫婦の会話を録音すること自体は違法とならないということです。
Q:日記や録音データ等の証拠は、どのくらいの期間集めると良いのでしょうか?
A:一概には言えません。モラハラの強度・頻度、証拠の種類・程度等の事情によって変わってきます。短いよりは長い方がいいので、可能な限り集めた上で、決して自分で判断せず、現状の証拠で足りているか弁護士の判断を仰ぎましょう。
弁護士法人あい法律事務所 共同代表弁護士 山口恭平
087-832-0550
この記事の執筆者
あい法律事務所
弁護士
山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)
取扱分野
家事案件(離婚・男女問題、相続)
経歴
法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。