別居をして離婚を切り出したが、離婚に応じてもらえなかった方へ

 

 当初は離婚に応じてもらえなかったとしても、離婚に至れるケースがほとんどです。

 離婚に至れたケースがどのような経過を辿っているのか、実際のケースをみてみましょう。

☆実際の相談事例①☆(離婚したくない理由が分からなかったが聞き出せたケース)

相談者3か月前から別居しています。別居前から夫婦は険悪な状態でした。別居してから何度か離婚したいと伝えているのですが、夫は、離婚に応じてくれません。早く離婚して生活を立て直したいです。」

 

弁護士仮に裁判になったとしても離婚判決を勝ち取れる事情があれば、早期に離婚となる可能性が高まってくるのですが、ご主人が浮気をしていたという事実はありますか?」

 

相談者「それはないですね。」

 

弁護士「では、同居中暴力を振るわれていたということはありましたか?

 

相談者「暴力はないですね。」

 

弁護士「人格を否定されたり、一方的に責め立てられたりして、精神的に追い詰められることはありませんでしたか?

 

相談者「お互いに言い合っていたので、一方的に夫に言われっぱなしということはありませんでしたね。」

 

弁護士「そうですか。そうなると、離婚判決を勝ち取れるほどの事情を見出すのは難しそうですね。
ご主人は、なぜ離婚したくないのでしょう?」

 

相談者「それが、はっきりしないんです。愛情があるとか、やり直せるとかは思っていないと思うのですが。」

 

弁護士「離婚したくない理由について聞いても答えてくれないのですか?」

 

相談者「そうですね・・・答えてくれないというよりは、感情的になってしまっていて冷静に話し合えていないという面の方が大きいです。」

 

弁護士「なるほど。それでは、離婚したくない理由はちゃんと聞き取ることから、始めた方がよさそうですね。そのうえで、どうすれば離婚できるのか考えることにしましょう。」

 

後日…

 

弁護士「ご主人の離婚したくない理由は聞けましたか。」

 

相談者「はい。今回は冷静に聞けました。」

 

弁護士「どんな理由でしたか。」

 

相談者離婚したら子どもと会えなくなりそうだからというのが主な理由でした。」

 

弁護士「相談者さんは、離婚後はお子さんとご主人が交流することについては、どう考えているのですか?」

 

相談者「子どもはパパのことが好きなので、なるべく会わせてあげたいと思ってはいます。でも、子どもに会いたいからと頻繁に連絡が来たり、運動会とかに来られるのは嫌です。」

 

弁護士「なるほど。ご主人はそのあたりを敏感に察知したのかもしれませんね。お子さんとご主人の面会を実施する上で双方が納得できるルール作りができれば、離婚が実現しそうですね。」

 

相談者「それは、どうやって進めて行けばいいのでしょうか?」

 

弁護士「そうですね。ある程度、こちらでルールの下地を作成してから、調整していくのが現実的でしょうね。一緒に、どんなルールで進めて行くのがお互いの納得を得られるのか考えていきましょう。」

 

 

☆実際の相談事例②☆(離婚を切り出したところ浮気を疑われ否定しても話しにならないケース)

相談者「先月から別居しています。夫は家事育児に協力してくれません。下の子が体調を崩してぐずっていたのとまだ洗い物も残っていたので上の子をお風呂に入れてとお願いすると、「仕事でつかれてる」「お前はパートなんだから家のことは全部やって当たり前」と言ってきました。以前にもそういうことがあって、私も余裕がなかったこともありカチンときてしまって、「仕事しているという割には収入が少ない」とか「○○さん家の旦那さんは収入も多いし、毎日ご飯も作ってる」とか「その程度でえらそうにするな」とか言ってしまって大げんかになりました。それからはずっと夫婦は険悪な状態でした。そんな状態が1年以上続いていて、雰囲気の悪い家庭で気まずそうに過ごす子どもがかわいそうで別居することにしました。夫には、別居する前に離婚したいと伝えたのですが、男が出来たんだろうと疑われ激高されました。上の子の習い事の送り迎えの関係で連絡を取っていたシングルファザーの男性と関係があると思い込んでいるようで、なにを言っても聞く耳を持ってくれません。早く離婚したいです。」

 

・・・裁判離婚できるような事情がないことを確認した上で・・・

※裁判離婚とは

弁護士「ご主人は冷静に話しを聞ける状況ではなさそうですね。」

相談者「そうだと思います。」

弁護士「協議離婚で進めるよりも、調停離婚で進めた方がよいと思います。 」

※調停離婚

相談者「早く解決したいので協議の方がいいのですが、調停離婚から始めるのですか?」

弁護士「そうです。ご主人の主張内容やお話しから想像する性格からすると、私の経験上、協議で納得することはないと思われます。そうであれば、早々に離婚調停を始めてしまった方が結果的には早いと思います。」

相談者「協議で納得しない人が、調停では納得するのですか?」

弁護士「絶対とは言い切れませんが、納得するケースが多いです。ただし、離婚成立までは半年から1年はかかることが予想されます。

相談者「離婚成立まで養育費はもらえないということですよね?それでは生活が成り立ちません。

弁護士「たしかに、養育費は離婚成立後からもらえるものです。一方で、離婚成立までは婚姻費用がもらえます。離婚成立までの生活は婚姻費用で支えることになります。」

※婚姻費用について

※婚姻費用の分担額は,どのように決められるのですか。

相談者「そうなんですね。早く離婚はしたいですが、夫の性格を考えたら、時間がかかってもしょうがないかなと思います。」

弁護士「養育費と婚姻費用とでは、婚姻費用の方が高額になっています。夫側の立場でいえば、離婚すれば負担が軽くなるということになりますので、婚姻費用をちゃんと支払わせることは離婚を進めるきっかけにもなります。

相談者「夫はケチなのでそれは効きそうです。夫が私の浮気を主張している点についてはどうなりますか?

弁護士「調停とはいえ、裁判所の手続です。こちらが浮気の事実はないと主張している以上、ご主人側が浮気の証拠を提出しないといけません。

相談者「証拠はないと思いますが、その場合どうなりますか?」

弁護士「調停員や裁判官から『証拠がなければ浮気の事実を認めることはできない、それは調停でも裁判所でも一緒である』という説明がなされ、浮気の主張はあきらめるよう説得がなされます。

相談者「夫は主張をあきらめるでしょうか?

弁護士「一度の説明では納得しないかもしれませんが、何度か説明をすることで、納得するケースがほとんどです。なので、納得する可能性は高いと思います。」

相談者「わかりました。このまま私が対応していても離婚できるとは思えませんので、お願いしたいと思います。

弁護士「分かりました。できる限り早く離婚が成立するよう進めていきましょう。」

 

参考:相手が離婚に応じてくれない方へ

 

あきらめるのは早い

離婚を拒否しているのが、妻側なのか夫側なのか、拒否する理由はなんなのかによって、離婚にいたる道筋は無数に存在します。離婚を拒否されてしまった人も、あきらめずに、一度相談にいらしてください。

 

あい法律事務所 共同代表弁護士 山口

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この記事の執筆者

弁護士山口恭平

あい法律事務所

弁護士

山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)

取扱分野

家事案件(離婚・男女問題、相続)

経歴

法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。