モラハラと慰謝料

☆ある裁判例(モラハラが原因で慰謝料200万円が認められた事例)☆

 

東京地方裁判所 平成30年(ワ)第11154号 損害賠償請求事件 令和元年9月10日

 

次のような事実(要約しています。)を認定し、これによって不眠や抑うつ気分等,精神科の治療を要する状態に陥った原告に対して200万円の慰謝料が認められています。

 

原告=妻

被告=夫 です。

 

①被告は原告に対して,婚姻届出の3日後、妊娠初期に一人で遊びに行くべきではないと述べ,それでも行くなら自己責任で好きにすればよいと突き放すような返信をした。

 

②原告がつわりのため部屋の片付け等の家事ができずにいたところ,被告は、原告の自宅には物が多すぎると文句を言い,「別居したい」等と言ったり,「妊娠で辛いときがあるのはわかるけど,辛くないときにやることちゃんとやってもらえないですか」と不満を述べたりした。

 

③被告は,原告へのSNS上のメッセージで,原告の勤務先が原告の妊娠に配慮しないことについて,「正直きちがい集団だとしか思えない」「ホントバカなんだろうね そんな人間が校長になれるとか 狂ってる」等と応答し,「妊婦なのに重い物を職場で持たされるのは完全なマタハラ」「訴えてもいいレベル」等と約3時間にわたって原告へのアドバイスを送信した。

 

④原告が仕事でお客からクレームを受けた際には,弁護士に相談に行く,証拠を残せ,等と原告に指示した上,その後に電話での会話を録音しなかった原告に対し,「証拠が大切といってる」「いうこと聞けないならもう助けられない」「バカなんですか?」「何が必要かほんとわかっていない人だね」「勝手にしろよほんと」と立て続けに送信した。

 

⑤被告は,原告との日常会話においても,ラーメン店で被告の器に原告が箸をのばして一口食べたことについて「意地汚い」「品がなさすぎる」「バカにどんな話しても通じない」等と言ったり,原告がFのDVDを買おうかと言ったことに対して「子供が生まれるのにそんなまたモノ増やす事言って死ねばいいと思います」と発言したりし,原告が家計の負担について被告と話し合おうとすると,腹を立て,「そっちが勝手にこんな高い良い家に住んで,こっちは□□を手放さないといけないのに,その上さらに援助してっておかしいでしょ,贅沢にもほどがある,そんなんだったら子供なんか作らなきゃいい」「離婚して犬連れて帰れよ」「もう犬捨ててこいよ」等と言い捨てたりもした。

 

⑥ 被告は、原告に恥をかかされたとして激怒し,「クズ」「死ね」「離婚して子供もおろせ」「何様なんだよ このクズ野郎」「マジで死んでくれないかな」「親の教育が悪すぎる」「こんな最低な女見たことない」等と原告を罵倒した。

 

⑦ 原告は,夕食時,大皿料理を食べる際に取り皿を使うべきかを巡って被告と口論になり,被告との会話を録音した。被告は,原告の発言をさえぎって自己の主張を大声でたたみかけ,原告が口論をやめようと言っても,少なくとも1時間以上にわたり,原告は常識を知らなすぎる等と言って,取り皿を巡る議論をやめなかった。

 

⑧ 被告は,体調が優れずに寝ていたが,原告が,インフルエンザに感染し胎児に影響が及ぶことを心配して,ホテルで外泊したいと言ったことに激怒し,「僕はインフルじゃない」「問題あるとしたら,あんたの日頃の行いだよ。部屋片付けねーとか,ちゃんときれいにしないとかさ。」等と原告を責めた挙げ句,子どもを堕ろすよう求め,なぜ堕ろさなければいけないのかと原告が問うと,「いらない。当たり前じゃん。やっていけないよ。あんたみたいなくそ人間と。自分のことしか考えてないんだよ。」と言い放った。原告が「子どものためじゃん」と反論すると,被告は,「子どものためじゃないね。俺は大丈夫っつってんだよ。それが信用できないんだったら,おまえ死ねよ,本当に。ふざけんなよ。こっちが大丈夫だっつってんのに,勝手にインフルエンザって決め付けて人を追い出すな。いや,本当に離婚届,明日持ってくるから書いてね。俺は書くから。勝手に1人で産めよ。勝手に1人で育てろよ。だったら。」と言い,原告宅を出て行った。

 

⑨ 原告は,被告に対し,被告を大事に思っていないわけではないが,離婚,死ねという言葉がショックであった等と記したメッセージをSNSで送信した。これに対し,被告は,午前2時前後の15分間に原告の対応はありえない,人間としておかしい等と批判するメッセージ8通を返信した。原告が被告のメッセージに返信せずにいると,被告は,翌日,原告に対し,「理不尽」「常識が欠如しすぎ」「最低」「頭が悪すぎる」等と非難するメッセージを送信し、繰り返し「ありえない」「ふざけすぎだろ」等のメッセージをSNSで送り続けた。

 

⑩ 被告は,離婚届を原告に送付し,その旨をメールで連絡した。その際,被告は,さらに原告を「クズ」「卑怯者」等と罵倒し,批判する文言を繰り返し述べた。

 

 

あい法律事務所 共同代表弁護士 山口

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この記事の執筆者

弁護士山口恭平

あい法律事務所

弁護士

山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)

取扱分野

家事案件(離婚・男女問題、相続)

経歴

法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。