医師と医師の妻のための離婚問題
医師の特徴
開業医・勤務医共通して一般的な会社員と比べてかなり収入が高いという特徴があります。
また、開業医の場合、会社経営者と同様に個人の資産と会社の資産の境界が曖昧になっている場合があるという特徴があります。
養育費
収入が高いため、算定表の上限収入を超えている場合があります。
この場合、算定表のもとになっている計算式にあてはめて計算する必要があり、かつ、計算式にそのまま当てはめるだけでよいのかを吟味する必要があります。なぜなら、教育関係費に充てられる金額には上限があり、計算式の枠内ではこの上限を超えた部分を排除できないからです。
また、医師の場合は、子どもが医学部進学を予定している場合が多く、小学校、中学校、高校と私立学校に進学するケースが多くあります。医学部の場合は、6年間、大学に通うことになりますし、私立大学の医学部の場合は、その他の学部に比べて学費も高額になります。
算定表で想定されている教育関係費を大きく上回ることになりますので、これは加算事由となります。
このように医師の離婚による養育費の算定の場合は、単純に養育費算定表に当てはめて金額を決めるという作業では適切な解決が図ることができません。
財産分与の割合
財産分与には、2分の1ルールがあり、このルールが適用されない場合というのは、相当例外的な場合に限られます。
この例外が医師の離婚の場合には適用される余地があります。なぜなら、医師という資格の取得は、(通常)婚姻前の本人の努力によるものであり、そこに配偶者の協力は関係ありません。そうなると、医師としての資格に戻づく収入の全てを配偶者の協力のもとにあると評価することが出来なくなります。もっとも、配偶者の寄与の程度を数値化することは出来ませんので、離婚時の財産額や配偶者が専業主婦か共働きか、家事育児の分担はどうなっていたか、離婚後の生活の見通しはどうかなど総合的な考慮の上に、夫婦としての公正さを損なわない範囲で分与割合が6対4や、7対3などに修正されます。
財産分与の対象となる財産
医療法人を経営している場合、医療法人に財産があるが、個人にはあまり財産が形成されていないということも考えられます。
基本的には、法人と個人の財産は別の財産であり、法人の財産が財産分与の対象になることはありませんが、財産を隠すために不自然に個人の財産を法人に移している場合には、法人の財産でも夫婦の財産とみなす余地があります。
さらに医療法人の出資持分を持っている場合、これも財産分与の対象になります。この出資持分をどのように評価するかがポイントになります。
この記事の執筆者
あい法律事務所
弁護士
山口 恭平(Yamaguchi Kyohei)
取扱分野
家事案件(離婚・男女問題、相続)
経歴
法政大学法律学科卒業後、早稲田大学大学院法務研究科に進学。卒業後、平成26年に弁護士登録。同年のぞみ総合法律事務所入所。平成29年にあい法律事務所入所。平成30年同事務所にてパートナー就任し現在に至る。